怪談・怖い話 体験談

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永遠の家族写真

私は写真館を営んでいる。先祖代々続く商売だ。デジタルカメラの普及で、街の写真館は次々と姿を消していったが、うちは古風な雰囲気と高品質な仕上がりで、細々と営業を続けていた。

ある日、一組の家族が来店した。父、母、小学生くらいの男の子。家族写真を撮りたいという。しかし、彼らの様子は少し奇妙だった。皆、硬い表情で、まるで人形のようだ。

撮影が始まると、彼らは一切動かなかった。ポーズを変えてくださいと言っても、微動だにしない。しかも、まばたきすらしないのだ。不気味に思いながらも、仕事だと割り切って撮影を続けた。
現像作業に入ると、さらに奇妙なことが起こった。暗室で写真を現像していると、家族の姿がゆっくりと動き始めたのだ。最初は目の錯覚かと思ったが、明らかに彼らは写真の中で動いていた。そして、彼らの口が開き、悲鳴のような声が聞こえてきた。
恐怖に震えながら暗室を飛び出すと、待合室に先ほどの家族が座っていた。しかし、彼らの姿は少し透けて見える。私に気づくと、父親がゆっくりと立ち上がり、かすれた声で言った。

「永遠の思い出を、ありがとう」

その瞬間、彼らの体が霧のように溶け、写真の中に吸い込まれていった。写真には、笑顔の家族の姿が写っている。しかし、よく見ると、その目は恐怖に満ちていた。

それ以来、私の写真館に来る客は、皆どこか生気のない表情をしている。そして撮影が終わると、現実世界から姿を消し、写真の中でのみ生きることになる。彼らは永遠の家族写真の中で、笑顔の仮面の下に恐怖を隠しながら、永遠に生き続けるのだ。

今日も新しい家族が来店した。彼らもまた、永遠の家族写真の仲間入りをするのだろう。そして私は、この呪われた商売をいつまで続けられるのか、恐れおののきながらシャッターを切り続けるのだ。