怪談・怖い話 体験談

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小さな図書館

私は古い洋館を改装して開業したばかりの小さな図書館で働いていた。開館から1ヶ月が経ち、やっと仕事にも慣れてきた頃のことだ。

ある雨の夜、閉館時間が近づいていた。最後の利用者が帰り、私は1階の照明を消して2階に上がった。すると、1階から本が落ちる音が聞こえた。「風で窓が開いたのかな」と思い、確認しに戻った。

1階に降りると、確かに窓は開いていた。しかし、それ以上に気になったのは、床に落ちていた一冊の本だ。それは目録にない、古ぼけた革表紙の本だった。

好奇心に駆られて開いてみると、そこには奇妙な記述があった。「地下室の扉を開けるな」と何度も繰り返し書かれていた。しかし、私の知る限り、この建物に地下室はなかった。

翌日、館長に尋ねてみたが、地下室の存在は否定された。しかし、館長の表情には何か隠し事をしているような影があった。

その夜、私は遅くまで残って建物の隅々を調べた。すると、事務室の奥にある本棚の後ろに、小さな扉を見つけた。鍵はかかっていなかった。

恐る恐る開けると、そこには薄暗い階段があった。懐中電灯を手に、私は下りていった。地下室は予想以上に広く、古い家具や箱が無造作に置かれていた。

奥に進むと、一つの部屋があった。扉を開けた瞬間、私は凍りついた。そこには、等身大の人形が何十体も立っていたのだ。どの人形も、この地域で過去に失踪した人々に酷似していた。

突然、背後でドアが閉まる音がした。振り返ると、館長が立っていた。彼の手には、私と瓜二つの人形があった。

「よく来てくれました。あなたを待っていたんですよ」

館長の声が響く中、人形たちがゆっくりと動き出した。私は叫び声を上げようとしたが...

次の日、図書館は通常通り開館した。新しい司書が採用され、誰もが以前の司書のことを覚えていないようだった。ただ、2階の一角に、見覚えのある顔をした人形が飾られていた。