怪談・怖い話 体験談

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置き配

私は都心のマンションで一人暮らしをしている会社員です。仕事が忙しく、買い物に行く時間もないので、ほとんどの日用品をネットで注文し、置き配で受け取っています。

先月のことです。いつものように仕事から帰ると、玄関前に小さな箱が置かれていました。特に気にせず部屋に持ち込み、開封しました。中身は注文した本でしたが、奇妙なことに、表紙に赤いインクのようなものが付着していました。「印刷ミスかな」と思い、そのまま本棚に収めました。

その夜、眠りについた私は奇妙な夢を見ました。見知らぬ男が私の部屋に侵入し、本棚から例の本を取り出すのです。男は本を開くと、そこから真っ赤な液体が溢れ出し、部屋中に広がっていきました。

冷や汗をかいて目が覚めると、なぜか部屋に生臭い匂いが漂っていました。慌てて本棚を確認すると、あの本が消えていたのです。そして本があった場所に、赤黒い染みがべっとりと付いていました。

震える手で警察に電話をしましたが、彼らが来るまでの間に、さらに恐ろしいことが起こりました。スマートフォンに見知らぬ番号から着信があったのです。恐る恐る電話に出ると、低い男性の声が聞こえてきました。

「本、楽しく読ませてもらったよ。特に最後のページが良かったな。君の血液型、わかっちゃったよ」

その瞬間、私は全てを理解しました。本に付着していた「インク」の正体を。そして、なぜ犯人が私の血液型を知っているのかを。

それ以来、私は置き配を一切利用しなくなりました。でも、毎日玄関前には見知らぬ箱が置かれています。開けることはありませんが、箱の数は日に日に増えていきます。

そして昨日、会社から帰ると、ついに玄関が開かなくなっていました。積み上がった箱が扉を塞いでいたのです。仕方なく、管理人さんに連絡しようとスマートフォンを取り出すと、また例の番号から着信が。

震える手で電話に出ると、あの低い声が聞こえてきました。
「やあ、久しぶり。届け物を受け取らないのは良くないな。今夜は、直接届けに行くことにしたよ。楽しみにしていてくれ」

電話が切れた瞬間、背後から誰かの気配を感じました。