怪談・怖い話 体験談

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祖母の遺した古びた音楽箱

祖母が他界して1ヶ月が経った頃、私は彼女の遺品整理を任された。長年人の手が入っていない屋敷は、埃と古びた匂いで満ちていた。

屋根裏部屋で見つけたのは、古めかしい音楽箱だった。透明なガラスのドームの中に、バレリーナの人形が立っている。底には「愛する孫娘へ」と刻まれていた。不思議なことに、この音楽箱だけは埃一つなく、ピカピカに磨かれているようだった。
好奇心に駆られて開けてみると、かすかな子守唄が流れ始めた。懐かしい旋律に、祖母との思い出が蘇る。しかし、その音色には何か不気味なものが混じっているような気がした。

その夜、私は奇妙な夢を見た。無数の人形に囲まれ、永遠に踊り続けている夢だ。目が覚めると、体が異様に疲れていた。まるで、本当に一晩中踊っていたかのように。
それからというもの、毎晩同じ夢を見るようになった。日に日に、現実世界での疲労が蓄積していく。眠れば眠るほど、疲れていく。
ある日、鏡を見て驚愕した。私の肌が、人形のようにツルツルになっていたのだ。そして、関節がギシギシと音を立て始めた。
恐ろしくなって音楽箱を処分しようとしたが、どうしても手放すことができない。むしろ、音楽箱のそばにいたいという強い衝動に駆られる。

今、私は自分の体が少しずつ人形化していくのを感じている。指先から、足先から、徐々に硬くなっていく。そして、頭の中では永遠に子守唄が響いている。
ふと気がつくと、私は音楽箱の中にいた。ガラスのドームの向こうに、新しい「私」が立っている。彼女は音楽箱を開け、私は踊り始める。
これが祖母の呪いなのか、それとも祝福なのか。永遠に踊り続ける運命を、私はどう受け止めればいいのだろうか。
そして今、あなたにも聞こえるだろうか? かすかに響く、あの子守唄が...