怪談・怖い話 体験談

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祖父の最後の贈り物

私の祖父は海洋生物学者だった。
彼が亡くなって5年が経った頃、突然、彼の遺品だという小包が届いた。差出人は、祖父が最後に乗船していた調査船のものだった。
小包を開けると、中から出てきたのは、奇妙な形をした貝殻だった。それは螺旋状で、ところどころに突起があり、全体的に黒ずんでいた。小包には手紙も同封されていた。
「孫よ、これは深海6000メートルで発見された未知の生物の殻だ。私の最後の発見となったこの標本を、君に託す。ただし、決して水に触れさせてはいけない」
私は貝殻を机の上に置き、しばらく眺めていた。するとふと、貝殻が僅かに動いたような気がした。気のせいだと思い、寝室に向かった。

夜中、奇妙な音で目が覚めた。音の正体を探ろうと部屋を出ると、廊下に水たまりがあった。そして、そこにはぬめぬめとした足跡が...。
足跡を追っていくと、キッチンにたどり着いた。シンクの中で、あの貝殻が大きく口を開けていた。そこから、触手のようなものが這い出してくる。
恐怖で声も出ない中、その生き物は徐々に大きくなっていった。触手は次々と伸び、部屋中を這い回る。壁や天井にまで這い上がり、あっという間に家中が触手で覆われた。
私は必死に玄関へ向かおうとしたが、足が何かに絡まれた。振り返ると、触手が私の足首を掴んでいた。それは私を引っ張り、貝殻の中へと引きずり込もうとする。
必死にもがく中、壁に掛かっていた祖父の写真が目に入った。よく見ると、祖父の目が私を見つめているように感じた。そして、その口が動いたような...。
「孫よ、許してくれ。私たちは、決して見てはいけないものを見てしまった」
その瞬間、触手が一気に私を包み込んだ。意識が遠のく中、私は理解した。祖父が最後に発見したのは、単なる深海生物ではなかったのだと。

そして今、その恐ろしい真実を知ってしまった私もまた、祖父と同じ運命をたどろうとしている。